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虐待防止|マルトリートメントへの介入には子育てスキルの向上が効果的

虐待防止|マルトリートメントへの介入には子育てスキルの向上が効果的

子供のマルトリートメント(不適切な養育)と脳の発達

子供のマルトリートメント(不適切な養育)と脳の発達について勉強しようと思い調べました。

マルトリートメントに対する介入方法ついても調べました。

虐待とマルトリートメント

日本語の”虐待”という言葉は、英語圏での”child abuse – チャイルド・アビューズ”と同義です。

チャイルド・アビューズは子供の濫用と訳すころができ、”虐待”よりも柔らかい表現にできなかったのかという視点もあります(オレンジリボン運動, n.d,)。

医学文献を調べていると「不適切な関わり – maltreatment – マルトリートメント」という言葉が使われています。虐待よりも広義で、家族外からの関わりも含まれています。

虐待には、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトがあります。

マルトリートメント・虐待が脳に与える影響

マルトリートメント・虐待は子供の脳の様々な部位の発達に影響があることがわかっています(カッコ内は脳の部位の主な役割)。

  • 海馬(記憶や空間学習能力):ネグレクト、虐待により、子供の海馬のサイズが小さくなる(Teicher et al., 2018)。
  • 扁桃体(情動反応の処理と記憶):子供の頃に虐待を経験した大人で、扁桃体のサイズが大きくなる(Pechtel, 2015)。
  • 前頭前野(実行機能):体罰により子供の前頭前野の灰白質のサイズが小さくなる(Tomoda, 2009)。

マルトリートメントに対する介入とその研究は増えてきている

マルトリートメントには、様々な影響があるので、効果的な予防が重要です。

マルトリートメントを防止し、減少させるための様々な方法が試されています。

しかし、いくつかのメタ解析によって、それらの介入の効果は限定的(効果的ではない)という結論に至っています。

今回調べた文献では、マルトリートメントに対する介入に関する研究を用いて、要素を分解し、効果的なものとそうで無いものとに振り分けています。

Identifying Effective Components of Child Maltreatment Interventions: A Meta-analysis. Clin Child Fam Psychol Rev. Impact Factor 3.600

そして、結論では、介入方法に効果的な要素を組み込み、効果のない方法を取り除くことで、より効果的な介入方法を提案しています。

一般的なマルトリートメントへの介入

介入の目的

介入は、すでに子供のマルトリートメントがある家庭でその頻度を減らすことや、マルトリートメントが起きることを未然に防ぐことを目的としています。

前者には、体系的な介入が、後者には、家庭訪問が一般的です。

家庭訪問では、情報提供、サポートの提供、種々の教育(子供の健康、発達、子育てについて)があります。

介入の開始時期

介入は、最初の2年間に行われますが、出産後数ヶ月で終わることもあります。

介入の要素

介入の要素には様々なものがあります。

  • 家族構成(低所得の10歳代の両親、アルコール・薬物依存症の両親など)
  • (結果的に)必要だった介入の回数など
  • 特殊な介入:問題解決のための振る舞いの教育、コミュニケーションスキルの練習、適切な振る舞いの強化など

特殊な介入にはさらに以下の2項目に細分化されます。

  • コンテンツ(典型的な子供の発達、両親の自己効力感の向上、しつけ・振舞いを教えるための方法論)
  • 技術の習得や関連するコンテンツの教育(グループ討論、宿題、ロールプレイ、モデル化)

子育てのスキル向上、社会的・感情的サポートの提供、両親の自信向上が介入の要素として重要

効果量

マルトリートメントの介入に関する研究について、介入群と非介入群との効果の差を、効果量として出力しています。

効果量とは、2つの標本間の平均値の差を標準偏差で割って標準化したもので、2標本の平均値の差を比較する際に使います。すなわち、2標本の平均値がどれだけ離れているかを表します。

統計WEB

結果

総合的な効果量は、0.287でした。

この値は、決して大きくはありませんが、介入によって、マルトリートメントが減少・改善していることを意味しています。

これを予防的介入に限ると、0.263であり、全体と比べると効果が少ないです。

治療的介入の効果量は、0.364であり、全体に比べると効果が大きいです。

効果的な要素

マルトリートメントの介入の要素のうち効果的な項目が、予防的介入と治療的介入に分けてまとめられています。

予防的介入

予防に関して、介入期間は短期間(6ヶ月まで)の方が、長期間よりも効果的でした。

”両親の自信を高める介入”がもっとも効果的だった。

治療的介入

治療的介入で効果が高かったのは以下の項目です。

  • 両親の子育てのスキル
  • 個人的な技能の向上
  • 両親のメンタルヘルスの問題への介入
  • 社会的・感情的サポート
  • 子供の幸福の向上

結論

マルトリートメントへの介入方法に関して、下記の項目が提案されています。

予防的介入

  • 両親の自信の向上にフォーカスする。

治療的介入

  • 子育てのスキルの向上、社会的・感情的サポートの提供にフォーカスする。
  • 両親にメンタルヘルスの問題があるかどうかをスクリーニングして、もしあれば介入する。

私見

これらの裏を返せば、両親が子育てに対して自信がない、子育てのスキルが低い、社会的・感情的なサポートが足りていない、両親がメンタルヘルスの問題があるという事象が浮かび上がってきます。

子育てのスキルを向上するための方法として、自分から情報を取りに行ったり、経験者から学ぶ方法などがありますが、当ブログも子育て関連の記事などで少しでも貢献したいと思います。

引用

Claudia E. van der Put,corresponding author Mark Assink, Jeanne Gubbels, and Noëlle F. Boekhout van Solinge. (2017). Identifying Effective Components of Child Maltreatment Interventions: A Meta-analysis. Clin Child Fam Psychol Rev. Impact Factor 3.600

Teicher MH, Anderson CM, Ohashi K, Khan A, McGreenery CE, Bolger EA, Rohan ML, Vitaliano GD. (2018). Differential effects of childhood neglect and abuse during sensitive exposure periods on male and female hippocampus. Neuroimage. Impact Factor 5.426

Tomoda A, Suzuki H, Rabi K, Sheu YS, Polcari A, Teicher MH. (2009). Reduced prefrontal cortical gray matter volume in young adults exposed to harsh corporal punishment. Neuroimage. Impact Factor 5.426

Pechtel, P., Lyons-Ruth, K., Carl M., Anderson, C.M. and Teicher, M.H. (2015). Sensitive periods of amygdala development: The role of maltreatment in preadolescence. Neuroimage. Impact Factor 5.426

統計WEB. (n.d.). 効果量2.

虐待防止対策室. (2004). 児童虐待死亡事例の検証と今後の虐待防止対策について. 厚生労働省.

オレンジリボン運動. (n.d.). 子ども虐待とは.